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美月はそこまで聞いた直後から、笑いを噛み殺すのに必死になった。美月は、数学も好きで、ある程度の勉強をしてきたので、この手のゲームの構造も、把握しているつもりである。
『このゲームで、先手必勝なんて、この人、本当にバカだ。ようし、ここでギャフンと言わせて、もう一言言って、帰ってやろう。』
美月は、自分の気持ちが態度に表れないように注意しながら、こう答えた。
「分かりました。では、その賭け、乗りましょう。でも、その前に確認ですが、私が勝ったら、本当に私の前から、姿を消すんですね?」
「ええ、そういう約束ですから。」
「あと、私が後攻で、いいんですね?」
「はい、もちろん。」
そして、美月は勝ち誇る表情を、抑えようとした。このゲームは要は、4の倍数を作っていくゲームだ。先攻の相手が1枚とったら、3枚、2枚とったら2枚、3枚とったら1枚を、後攻のプレーヤーはとっていく。すると、先攻・後攻のプレーヤーのとった枚数が、4の倍数になっていく。花びらは17枚で、4で割ると1余るため、先攻・後攻両者のとった花びらの枚数が、16枚に達した段階で、次の順番が先攻に回り、最後の1枚を、とらなければならない、という算段だ。
『この人、こんな簡単なこのゲームの仕組みを、知らないのだろうか?
まあいい。これでこの人とも、今日限りだ。』
美月は、そう思った。
悠馬:1枚、美月:3枚、悠馬:2枚、美月:2枚、悠馬:3枚、美月:1枚、という順番で、ゲームは進んだ。そして、花びらは残り5枚となった。
『ここまで来たら、負けに気づくだろうか?でも、もう遅い。』
美月は、心の中でそう呟いた。
そして、次に悠馬が3枚とったため、美月は計算通りの、残り2枚のうちの1枚をとりながら、悠馬にこう言った。
「中谷さん、あなたの負けです。やっぱり私、あなたのこと、好きになれそうにありません。」
「ちょっとよく見てくださいよ。」
そう言いながら悠馬は、テーブルに置かれた花びらを見るように、美月に促した。
すると…、
「えっ、そんな?」
そこには、2枚の花びらが、置かれていた。
『確かに私は、4の倍数になるように、とってきたはず。…もしかして私、ミスをしたのかな?いや、そんなはずはない。ということは…。』
「あなた、イカサマをしましたね。」
美月は花びらを確認した後、一瞬困惑したが、すぐに真相に辿り着いた。
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