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「イカサマとは失礼ですね。これは賭けです。だってこのゲーム、普通にやったら、後攻が必ず勝つじゃないですか。」
「…始めからそのつもりだったんですね。あなた、予備の花びらを1枚用意して、私の目を盗んでテーブルの上に置いたんですね。
私、そのことに全然気づきませんでした。それは認めます…認めますが、インチキには変わりありません。やっぱり私、失礼します。」
「ちょっと待ってください。」
悠馬は、美月を呼び止めた。(今日だけで、何度悠馬は、美月を呼び止めただろうか。)
「僕、マジックが趣味なので、これくらい朝飯前です。」
「…そんなことは聞いてません。」
「すみません、余計なことでしたね。
でも美月さん、さっき自分で、
『僕のイカサマには気づかなかった。』
というようなこと、言われてたじゃないですか。
実はそれも、計算済みのことでした。
僕は、美月さんとは、未来の世界では付き合っているんです。だから、美月さんのこと、よく分かっているつもりです。
美月さんは、人をよく見るタイプですが、ちょっと、早とちりな所がありますね。この賭けだって、美月さんが僕のイカサマに気づいて、花びらを2枚とれば、完全に僕の負けでした。
でも、美月さんはそうはせず、1枚しか花びらをとらなかった。…それは、ちょっと早とちりで、おっちょこちょいな美月さんの性格を考えて、僕が仕掛けた罠です。
だからこの勝負、完全に僕の勝ちだと思います。」
美月は、悠馬にそう言われ、少し黙り込んでしまったが、何とか言葉を絞り出した。
「そう言われてしまうと…。
それにしても、大した自信ですね。」
「…いいえ。自信なんてありませんよ。
僕にとって、これは本当に賭けでした。だって、いくら僕が美月さんの性格を把握しているからと言って、うまくいく保証はどこにもありません。あと、一応僕はマジックをやっているので、この手のことは得意です。…ですが、それも、100%確実に、うまくいく保証なんて、ありません。」
「…分かりました。この勝負、私の負けです。あなたは、未来の私を、しっかり見てくれているんですね。」
「ありがとうございます。
でも、僕がこの賭けに勝てて、本当に良かった。」
そう言った悠馬の目には、うっすら光るものが浮かんでいた。
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