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「あの人、背が高くて細身で、遠くから見てもかっこいいけど、こうして隣のテーブルで見てると、もっと、男前だよね!」
真由は、ひそひそ話をするような小声で、美月たちにそう言った。
「ちょっと、止めなよ。聞こえるって。」
美月は、真由のおしゃべりを止めようとして、こう言った。実際、この時の真由は、ついさっき、自分の身の上話をしてすっきりしたせいか、少しハイになっているように、美月には感じられた。
「はじめまして。何か、お話中ですか?」
その様子を見てか見ずにか、その青年は、美月たちに、そう話しかけた。
『まずい、今の話、やっぱり聞かれちゃったんじゃないかな?とりあえず、面倒なことになる前に、ここは帰った方が良さそう…。』
美月はそう判断し、
「いえ、何もありません。さ、帰るよ。」
と言い、その場を離れようとした。
しかし…。
「私たち、今女子会してるんです!」
真由が、美月を制するようにして、この青年に話しかけた。
「ちょっと真由、帰るよ。」
そう美月は言ったが、
「いいじゃん。ちょっとだけだから。」
真由の頭の中のスイッチは、完全にオンになってしまっていた。美月は、
『そういえば真由って、イケメン好きだったような…。あと、どちらかというと、惚れっぽかったような…。』
というような内容のことを、頭の中で思い出していた。そして、
『この調子なら、運命っていうのも、怪しい気がしないでもないな…。』
とも頭の中で思ったが、それを口にすると真由の逆鱗に触れそうなので、決して言い出すことはできない、美月なのであった。(美月はイタズラは好きだが、こういった、その人の核心に迫ることで、相手の気を逆撫でするようなことは、できない体質であった。この辺りも、美月の優しさであるかもしれない。)
「そうですか。楽しそうで何よりです。」
青年は、にこやかにそう答えた。その青年の笑顔は、やはり素敵で、真由の心は、青年に奪われかけていた。
「ところで、私たちのさっきの話、聞いてました?」
そんな真由を尻目に、美月は冷静に、そう答えた。美月も、確かにイケメンは好きだし、この青年はどちらかというとイケメンの部類に入るとも思うが、一目惚れなど、すぐに人を好きになることをしないタイプの美月であったため、その青年に特にのめり込むことはなかった。
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