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『会うのが今日で初めてなら、どうしてこの、中谷さんは私の名前を知っているんだろう?もしかしたら、どこかで私の個人情報が、流出したのかもしれない。やっぱりこの人、怪しい人だ。
…にしても、『2016年4月段階』っていうのは、どういう意味だろう?
どっちにしろ、ここは帰った方がいい。』
美月は瞬時にそこまで考え、席を立とうとした。
「待ってください。僕は、決して怪しい者ではありません。今から、僕の素性を話すので、もう少しお付き合い、願えませんか?」
中谷悠馬と名乗るこの青年は、こう答えた。
「では単刀直入に聞きますが、どうして、初対面のあなたが、私の名前を知っているんですか?」
美月は半分イライラしながら、そう言った。
「それは、僕たちが初対面なのは、あくまで2016年4月段階のことであって…、
すみません。説明になっていませんね。
実は僕は、2017年9月の、未来から来た人間なんです。」
「…はい?」
美月は、あまりにも予想外な彼の言葉に、耳を疑った。
『どうせ吐くなら、もっとマシな嘘吐けよ!』
美月は、女の子らしからぬ悪態を、心の中で吐きながら、その場から立ち去ろうとした。
「待ってください!いきなりそんなこと言われても、普通はびっくりして、信じてもらえないですよね…。
だから、一応証拠、持って来ました。ここに、2017年9月23日、土曜日の朝刊の、写真があります。」
悠馬は、そう言って、自分のスマホを取り出した。そこには、はっきり、「2017年9月23日」と印刷された、朝刊が映っていた。
「一応補足ですが、こんなもの、偽造すると思いますか?もし僕が怪しい人間なら、もっと効果的に、美月さんに近づいたと思います。わざわざ、『未来から来た』なんて言わないですよね?」
「た、確かに…。」
美月は、それで納得した。というより、するしかなかった。信じられない、SFのような話だが、この、中谷悠馬さんは、本当に約1年ちょっと後の、未来からここに来たのだ。美月は、少しの間、驚きを隠せなかった。
そして少し時間が経った後、美月は冷静になり、悠馬に質問をした。
「さっき、その…中谷さんは、『2016年4月段階で、私たちは初対面』というようなことを、仰っていましたよね?ということは、その、2017年9月段階では、そうではない、ということですか?
私たちは一体、どういう関係なんですか?」
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