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「それで、いつも言ってるけど、僕、プロの作家になることが夢なんだ。もちろん、プロの世界は厳しいし、そう簡単にはなれないことは分かってる。でも、僕は挑戦してみたい。もちろん、今の仕事を辞めるつもりはないよ。介護士の仕事を捨てて、作家一本でいくことは、リスクが大きすぎるからね。ちゃんと、地に足をつけて、その上で、作家の夢を追いかけたい。それに、今売れている作家の中にも、別の仕事と掛け持ちしている、兼業作家が多くいるんだ。僕がそうなれるかは分からないけど、とりあえず新人賞に応募して、自分の実力を、試していきたい、そう思ってるよ。」
「うん。奏の夢の話、何度聴いても、飽きないよ。」
奏は少し早口になりながら、奈美に今の思いを伝えた。気づけば、今日のために予約したレストランのコースは、デザートが出る順番まで来ていた。自分へのごほうびのため、そして大好きな奈美のためにセッティングした楽しい時間も、もう少しで終わりを迎える。
「そうか~。プロの作家か。でも、それでもし、奏が新人賞に受かって、作家デビューしたら、人生、変わっちゃうね。」
奈美は冗談交じりで、こう言った。
「それで、書いた小説がどんどん売れ出して、一流作家の仲間入り、なんてことになったらどうする?」
「それは、嬉しいけど…。」
「そうなったら、印税収入がたくさんだね。そしたら、私のために、好きなブランドのバッグや小物、いっぱい買ってくれる?」
「もちろん、そうなればだけど、奈美のためなら何でもするよ。」
奈美の冗談に、奏は答えた。奏は、奈美にはこういう、かわいらしい所もあるのだと、思った。
「ありがとう。じゃあ期待して待っておくね。でも、もし奏が一流作家になったら、私のことなんか忘れて、他の女の人と、付き合い始めたりして。」
「そんなこと言わないでよ。僕にとって、奈美は1番の存在なんだ。だから何が起こっても、奈美とは別れたくない。」
どうやら奈美は、少しだけ飲んだお酒に、酔っているようだ、奏はそう思った。奏も奈美も、お酒には決して強くはない。
「冗談だよ冗談。困らせてごめんね。でも、ムキになった奏、ちょっとかわいかった。
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