第1章

3/11
前へ
/11ページ
次へ
などと考える人もいるらしいが、私の家はそうではない。私は小さい頃から、そして今でも、父のことが大好きだ。それもこれも、大好きな野球のおかげだと思っている。少し大袈裟かもしれないが、「野球が親子の絆をつないでいる。」みたいな。  そして、父と野球観戦をしているうちに、私の体に、ある変化が訪れた。  「このピッチャー、2球とも真っ直ぐで追い込んだか。次は、1球外すかな。」 ピッチャーの配球など、野球の戦術も好きな父は、私にこう話しかけた。  しかし―。 「次は、ストライクからボールになるフォークで3球勝負…。」 私は、父にこう答えた。 「いやいや、この場面で3球勝負はないだろ。…あれ、凪沙の言う通りだ。」 そのピッチャーは、私が予言した通り、3球勝負で三振を奪った。  ―その時、私の体には、異変が起きていた。なぜか、私の目には、ピッチャーの球筋の、残像のようなものが映ったのである。そして、野球に詳しい私は、その残像が、次に投げるピッチャーの球種であることを、瞬時に理解した。 ―「次の球は、外角へのチェンジアップ…。」 ―「次は、真っ直ぐが外れてフォアボール…。」  そして私は、ピッチャーが意図した球だけでなく、コントロールをミスした球まで、言い当てることができるようになっていた。  「凪沙、いったいどうしたんだ。すごいな。」 これは、この能力を授かり、それを一通り披露した後の、父の言葉である。  ※ ※ ※ ※  そして、インフルエンザから体調が回復した後も、この能力は、消えなかった。その後私は、あることを思いつき、野球部の監督に提案した。  「何、相手ピッチャーの球筋が見える?本当か、それ?」 「はい、何なら証明しましょうか、先生。」 そう言って私は、他校の練習試合に、監督の先生と足を運ぶことになった。  「このピッチャーの持ち球は、真っ直ぐ、スライダー、フォークの3種類です。特に、フォークの精度が高いですね。あ、でも、次に投げるのはスライダー…を投げミスして真ん中に来ます。」 「…本当だ。何てことだ。」 そして私は、次に投げるピッチャーの球筋だけでなく、そのピッチャーの持ち球も、言い当てることができるようになっていた。  「次は、スライダーを打つ練習だ。球筋は分かっているんだから、しっかり打てるようにしとけよ!」
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加