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僕はあの夢?の後、深い眠りの底に落ち、気がつけば窓から、朝日がぼんやりと入ってきていた。
(夢、だったんだろうか…)
煤けた天井をぼんやりと眺め桜の木の夢の事を考えた。
甘い香りと、少し寂しげな人の声。。
とても懐かしい。。聞き覚えのある声だった。
…鬼。逢いたいよ…
「それにしても。鬼って。」
鬼にいいイメージはないし、僕はどちらかと言うと優柔不断で、大人しい男だとは思う。
「やっぱり、夢だよな!」
すくっと立ち上がり、頭をわしゃわしゃしながら、まだ見慣れないこの街を少し歩いて見ようと思った。
「桜ヶ丘だから、桜の木の丘があるのか?」
アパートの周りは、こじんまりとした家が立ち並び、到底、桜の木のあるような場所など無いように思えた。ゆるい坂道を少し歩いていると街の人が、白い大人しそうな犬と散歩しているのが見えた。
「こんにちわ!」
「はいはい。こんにちわ。」
少し初老のその人はにっこり笑って話しかけてきた。
「朝早いんだねぇ。見かけん顔だけど。学生さん?」
「あ。四月から○○大学に。」
「そうなんだ。この街は親戚かなんかいるの?」
「いや。まったく。。」
「昨日越してきたばかりで、少し、散歩してみようと思って。」
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