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甲賀高校は電光石火の先制点を奪いつつも、遠江姉妹社に野球経験の差によって流れを奪われていた。それが、白烏の伝令による檄によって、ようやく目を覚ました。しかも、トリプルプレーという離れ業で、球場の空気は一変していた。
「よしっ、月掛、よく飛んだ! みんなナイスプレーや! この回、いけんぞ」
副島がナインを鼓舞する。
「おおっ、いける!」
「追いつくで!」
すっかり調子を取り戻したナインが副島の大声に応える。打順は2番の先程ファインプレーを魅せた月掛から。好打順である。
遠江姉妹社には三人のピッチャーがいる。右の本格派。そして、二番手のサウスポー。三番手にはサイドスローの技巧派も控えるが、甲賀高校打線は初回からリリーフした二番手のサウスポーを打ちあぐねていた。
「みんな、時間無いけど、簡単に言うから聞いて」
伊香保が輪に加わる。
「今、あちらさんのピッチャーを打ててないのは私のデータのせいだと思う。私のデータでは変化球が7割、ストレートが3割ってなってるから皆が対応できてないんだと思う。どうやら、変化球のコントロールが今日はうまくいってないみたい。だから、ストレート中心になってるだけ。オッケー?」
「そっか、なるほど。分かった」
滝音がそう言って頷き、打席へ向かう月掛がバットを高く上げて笑った。
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