12.いざ初戦 甲賀者、参る

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「よしっ、最終回や。2点負けとる。けどな、負けとらん。俺らは内容は負けとらんで。絶対、絶対に追いつくぞ! 終わらせてたまるかよ!」  副島を中心に皆で肩を組み、円陣を組んでいた。副島の必死の叫びに甲賀者の血が騒ぐ。 「犬走っ、何としても出てくれ! 頼んだで!」  この回、先頭の犬走が輪を外れ、打席へ向かう。 「必ず出る。俺をホームへ返してくれ。……それと……」 「……それと?」 「副島……追いつくんじゃない。この回、逆転サヨナラだ」  副島はその言葉に笑った。 「へっ、せやな。よしっ、みんな、逆転サヨナラや! いくぞっ、甲賀っっ!!」  おおおっっ!!!!!  遠江姉妹社の監督がベンチの前まで出て、大きなアクションで守備位置を動かしていた。  外野が二人しかいない。超前進守備の内野手たちに外野手が一人加わっている。是が非でも犬走を塁に出さないという布陣だ。  犬走がだらりとバットを下げた。  一人ランナーが出なければ、敗けが決まる。必ず、出塁する。シン、ヒョウ、セイ、力を貸してくれ。犬走はポケットに忍ばせた御守りを握り、三匹に願った。
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