12.いざ初戦 甲賀者、参る

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 副島が皆の目を見ながら語った。 「俺はお前らが野球部入ってくれて、こんなんまでやってくれるなんて、思ってもみいひんかった。俺もお前らとおんなじ気持ちや。一回戦で負けてたまるかよ」 「おおぉっっ」  打席に月掛が入る。  必ず、繋げてやる。バットでヘルメットを叩き、グラウンド一番の小兵は気合いを入れた。  ベンチでは、伊香保が目に涙を浮かべていた。 「アキレス腱、両足ともだなんて……。そんな無理をして……」  滝音が伊香保の肩にそっと手を置いた。 「大丈夫だ。うちには東雲がいる。なあ、そうだろ?」  桔梗が滝音にウインクした。 「ふふ、さすが滝音家。よくご存知で」  伊香保は溜まった涙を拭いて首を傾げた。
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