12.いざ初戦 甲賀者、参る

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 9回裏、ワンアウト二塁。  甲賀1-3遠江姉妹社。  ここで、三番、桐葉が打席へ向かう。 「桐葉、ピッチャーまた代わったけど、自分のペースで!」  大事そうにバットを抱える桐葉は、滝音が掛けたその言葉に振り向いた。 「打線は1点しか取っていない。犬走と月掛で取った1点だけ。その責任は俺にある。必ず、任務を果たす」  桐葉が凛とした姿勢で打席に入ると、マウンドのピッチャーはひとつ唾を飲み込んだ。殺気が充ちていた。 「桐葉くん、間違いなく打つね。格が違うわ。今までピッチャー代えられてばかりだったけど、あの右ピッチャーは一回対戦してるから、桐葉くんが勝つな」  桔梗がそんなことを言った。皆も同じくそう思っていた。 「……いや、桐葉は打たれへんな」  副島がぽつりとそう返した。 「え? それって油断するなってこと? 桐葉くんは油断してないよ」 「そういうことやない。打たれへんのちゃうな。正確に言うと、打たせてくれへんわ」  そう言って、副島はネクストバッターズサークルに入った道河原を見た。 「……なるほど、それはそうだな。一塁は空いてるんだ。桐葉とは勝負せずに敬遠してくるだろう。あっちは道河原で勝負してくる。……で、副島……そうなったら、どうする?」  滝音が副島に問う。  副島は眉間に大きな皺を寄せて、腕組みをした。
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