12.いざ初戦 甲賀者、参る

61/75
前へ
/531ページ
次へ
 甲賀一の刀使いである桐葉家では、三種の斬撃が代々子孫へ伝承されている。  瞬時、かつ威力に優れる「水月刀(すいげつとう)」  まだ刀貴が会得していない奥義「竜突(りゅうとつ)」  それに、月掛などの飛翔を得意とする忍者や、天井裏からの襲撃に対応する「舞葉斬(まいはざん)」  この三種である。  ボーーーール。  3ボールノーストライク。  完全な敬遠策だ。  道河原が気合いを入れて、ネクストバッターズサークルで立ち上がった。副島がその道河原を呼び寄せようと声を出そうとした時、桐葉がまた、大きく副島に向かって手を広げた。  大きく首を振り、やめろと合図している。  副島はその合図を信じ、立ち上がった腰をまたベンチに降ろした。 「……あいつ、何するつもりだ」  ふうぅぅぅ。  桐葉は大きく息を吐き、居合の構えを解いた。バットを片手でぶらりと力なく持ち、棒立ちしている。  遠江姉妹社のバッテリーだけでなく、この球場の誰もが、敬遠策で構える必要がないと判断したのだと思った。
/531ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加