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また、しつこくピッチャーが変わる。遠江姉妹社もなりふり構わない。必死の継投で逃げきりを図る。今度は道河原が苦手なサイドスローの変化球投手だ。
それも、今の道河原にはあまり効果がなかった。犬走のちょこんと当てて走るあのバッティングがヒントだ。
ちゃんと当てた後にしっかり振れば、ヒットやホームランにはならずとも、外野に飛ばせる自信はある。それは、桐葉がわざわざ三塁まで進んだ意味でもある。
ふうぅぅぅ。
道河原も桐葉と同じく大きな息を吐いた。ここでバットに当てることもできなければ、俺はただの木偶の坊や。その自覚と、ここで打てなければ試合に負けるという、甲賀の守りを担ってきた道河原家にとって血が滾る状況が、道河原の神経を研ぎ澄ませた。
三球目だった。
慎重に変化球を続け、道河原に打たせまいとした決め球だった。必死に食らいついたボールはバットの上っ面に辛うじて当たった。
当たった瞬間、上っ面に当ててしまったという感覚があった。それでも、道河原はしっかりと振り切った。これが大きかった。
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