12.いざ初戦 甲賀者、参る

67/75
前へ
/531ページ
次へ
 上っ面に当たった分、高く打球が上がる。最初はセカンドが大きく手を広げて打球の落下を待っていた。が、思った以上に上空で伸びる。徐々に下がり、半身になりながら打球を追う。 「オーライ! 任せろ」  ライトがセカンドに変わって声を出した。  後ろ向きで捕球すれば、犠牲フライになってしまうかもしれない。ライトが前に出て捕球すれば、三塁ランナーは走れない。ライトはそう考えた。  じり、じり、と前に出る。じり、と前に出たが、異変に気付く。まだ、伸びている。一歩、二歩と下がり、汗が一滴落ちる。なんて……パワーだ。少し小走りで追いながら気付いた。定位置まで戻らされている。 「なんて力なの。バットの上に擦った感じだったはずなのに」  伊香保もベンチで驚嘆していた。  セカンドフライと思われた打球は上空で伸び、結局ライトへの犠牲フライに充分な飛距離まで到達した。  ライトが捕る。瞬時、桐葉が本塁へ走る。必死の返球が本塁へ返ったが、手から滑り込んだ桐葉の指先が先に本塁をとらえた。  甲賀3-3遠江姉妹社  道河原の初打点となる犠牲フライで、土壇場でついに甲賀が土俵中央に遠江姉妹社を押し戻した。
/531ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加