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同点のホームを踏んだ桐葉と道河原がベンチに戻り、次々とハイタッチを交わしていく。やっと初打点をあげた道河原は囲まれて祝福されていた。
道河原を迎えたナインの輪から、藤田がそっと離れた。燃えるような目で犬走とともにキャッチボールを始める。
せっかく同点にしてもらっても、延長で点を取られたら元も子もない。疲労はあるが、そんなことは言っていられない。途中、滝音さんや蛇沼さんが投げてくれたお陰で、少し回復はできている。延長15回までだって投げてやる。
延長戦となると、選手層の薄い甲賀が不利だ。犬走もいないため、もう残った9人は怪我することも許されない。
気合いの乗ったキャッチボールをする藤田を見て、全員がグローブをはめた。延長に入っても全員で守り、全員で攻める。そして、勝つ!
沸騰するような目の力、湯気が漂うかのような熱気。甲賀ナインは延長戦へ向け、最高のモチベーションで準備していた。
打席から、横目にその様子が見えていた。
……おいおい。
ベンチの外では藤田が白烏へ最高のストレートを投じ、肩を仕上げた。準備万端だ。
……いや、おいおい。
ベンチでは伊香保を中心に、全員で守りの確認をしている。延長へ、抜かりない。
……いやいや、おいおい。
誰一人、五番副島の打席に目を向けている者は居なかった。
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