4.キャッチャー 滝音鏡水

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 父が演習を行うと言い、山へ出向いた。  装束に身を包んで山へ入ると、金属が木を穿つ音が聞こえている。 「白烏家の結人だ。お前と同じ歳だぞ」  父はそう言って指を指した。指した先には小さな的がある。枝にぶら下がっている。その中央に、トンッと音を立てて八方手裏剣が刺さった。放たれた先を見るが、人の姿はない。 「もっと向こうの大木の陰だ。曲げながら投げている」  父はにやりと笑った。その笑顔は鏡水に向かっていない。? 鏡水が首を捻ると、その笑顔の目の前に男が現れた。 「久しぶりだな、滝音よ」  父とその男はがっちりと握手を交わした。 「ああ、せがれは成長しているようだな」 「いや、全然だ。やっと投げられる指にはなった。これからだな。鏡水くんはどうだ?」  ふふ、父は笑みを浮かべて、鏡水を見た。  鏡水は辺りをじっくりと見渡していた。 「どうだかな。今日で分かる」  遠くで木が数本倒れる音が響いた。鏡水、結人、そして二人の父がそちらに目をやる。 「桐葉(きりは)家も来たようだ。勝手に斬りおって……」
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