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滝音と桔梗が広い歩道を横並びで走っていた。サヨナラ勝ちの熱狂も早々に、二人は犬走が運ばれた病院へ向かっていたのだ。
「アキレス腱、しかも両足……正直、どうだ?」
滝音が隣を走る桔梗へ問う。
「十日ほしいのが正直なところ。あとは、犬走くんの身体次第かな」
「十日……それだと間に合っても決勝か……。もう少し短くならないか?」
「……やるだけやってみるよ」
くノ一。
可憐に、妖艶に、それでいて淡白に、無慈悲に人を殺める忍者。現代では、くノ一の印象はそんなところではないだろうか。
そもそも、甲賀に限らず伊賀も含め、忍者の絶対数は少ない。その少ない人数で隠密にて重要な任務を背負っていたのが忍者である。忍者はその特殊な身体能力ゆえ、代えが利かない存在だった。それでいてミッションは過酷である。一人怪我をすれば、ミッションの遂行は難しい。そんな世界であった。
それを支えたのがくノ一であった。くノ一は変装や忍び込みによって標的を狙う重要な任務の傍ら、もうひとつ重要な任務を背負っていた。
それが医術である。
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