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「まずは入院している犬走くんを無理にでも退院させる。手術は断ってって伝えたから縫合されてないと思うけど……」
「分かった。橋じいが犬走のお母さんに連絡して事情を説明してくれてる。お母さんと合流して、東雲家を名乗れば分かってくれるだろ」
行き交う人の群れを二人がスラロームのようにかわしていく。すれ違った人々が何者かと振り返るが、既に二人の姿は見えない。
「滝音くんの冷静なリード、かっこ良かったよ! ちょっときゅんとしちゃった」
走りながら桔梗が滝音に身を寄せる。
「ふっ、俺に艷術は通じないぞ」
「ちぇっ、滝音くんは由依とできてるもんね」
「って、できてねえよ! 俺と伊香保は勝つために一緒に分析してるだけだ」
「ふふ、耳真っ赤にしちゃって。かわいい」
桔梗の甘い香りが通りに立ち込める。病院が見えてきた。
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