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続く三回戦、近年力をつけてきた彩羽根高校を相手にして、甲賀はいよいよ乗ってくる。
活躍したのは蛇沼と桔梗であった。相手ピッチャーのナックルカーブという揺れるような大きな変化球にこの二人が対応したのだ。
特に蛇沼はひねくれたもう一人の自分を出し、揺れるボールをことごとく打ち放った。初本塁打を含む5打数4安打、1本塁打、5打点というめざましい活躍であった。
「神さん、四番みたいやん! すげえすげえ!」
ベンチで月掛に何度も叩かれていた。
一方の桔梗は、この三回戦から自分のペースを掴み始めていた。大会に慣れてきたようで、得意の色気で翻弄するようになったのだ。
物憂げな瞳と女性のようなしおらしさ(正真正銘の女性だが)に、彩羽根高校のバッテリーは厳しいコースを攻められない。それに加えて、ナックルカーブは厄介だが、桔梗にとっては速いボールよりよっぽど打ちやすかった。
蛇沼同様、初めての二塁打を含む5打数3安打、2打点の活躍。皆が無邪気に喜ぶ桔梗を讃えた。
「桔梗さん、すごいです」
藤田が桔梗とハイタッチすると、桔梗は身体を寄せてウインクした。
「あとは藤田くんのピッチングだね」
さらしを巻いても少し膨らみのある桔梗の胸が、藤田の左腕に微かに当たった。
「ぁん」
だめ押しの吐息を桔梗が藤田に浴びせる。
藤田のアドレナリンが沸騰した。
藤田はこの直後から140km台のストレートを連発する。人生初の145kmまで記録した。彩羽根高校は覚醒した藤田に手も足も出なかった。ちなみにこの試合以降、藤田はユニフォームを手洗いに切り替え、左腕の部分だけは一度も洗っていない。
9-1でまさかの七回コールドゲーム。甲賀の圧勝となった。
彩羽根1-9甲賀
甲賀高校、準々決勝進出。
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