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「みんな、集まってくれ」
「みんな、集まってくれ」
滝音と副島が同時に声をかけ、ナインを集めた。二人、顔を見合わせる。譲るように副島が滝音に語りを促した。
「みんな、ここは俺が話させてもらう。とりあえず、ここまで相手の策は適切だ。打撃で好調な藤田と桐葉とは無理に勝負しない。蛇沼と東雲には速球中心になるだろう。明らかにウィークポイントがある道河原には変化球中心で、白烏は打てないと見て早めに追い込んでいる。実に理にかなってる。その結果が今の2-8という状況だ。だけど、理にかなっているなら、その理を解くだけのこと。それだけで俺らは勝てる」
円陣を組んだ半分が首を傾げる。期末試験にて学年ワースト3に入った道河原と月掛は、更に大きく首を捻っていた。
「滝さん、意味わかんねえっす。どゆことすか?」
「うん。簡単に言えば、相手さんはアウトの計算をしてるんだ。蛇沼と東雲、それに道河原と白烏からはアウトを取る。藤田と桐葉は歩かせても良い。そうすることで勝つ、とね。だから、その理のどこかを解いてやる」
「どうすれば良いんだ?」
桐葉が割って入ると、滝音は笑いながら応えた。
「蛇沼と東雲はひたすらカットだ。もう数試合やってきた。野球というこのスポーツに慣れたら、二人の能力をもってすれば当てることはもうできるだろ? 打てなくともファウルで粘られると、相手さんは考える。あとは根比べだ。その根比べに勝てば、あとは俺と副島で仕留める」
桐葉が怪訝な顔をする。
「お前と……副島で?」
「ああ、俺と副島はお前のように天才ではないし、月掛のように飛べないし、道河原のように馬鹿力があるわけでもない。ただ、弱点は少ない」
その通りや、とでも言うように副島が大きく頷いた。
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