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───準々決勝の翌日は休養日として、日程が空けられる。東彦根との準々決勝を制した甲賀高校は午前中に軽くストレッチとランニングを行い、昼前に準決勝で対峙する滋賀学院の対策講義を伊香保が行い、そのまま解散した。
本来ならば、まだまだ守備の連携などやりたいことは山積みだ。だが、ここは各々が疲れを癒し、準決勝、決勝という連戦を乗りきるため、身体を休ませることとした。
喜ばしいことは、朝のストレッチ、ランニングともに犬走が通常通りこなせたことだ。
「犬走、明日いけそうか?」
副島が問うと、犬走は一本ダッシュをしてみせた。
「100%とは言えないけど、驚くほど違和感はないよ。東雲のお母さんはすごいな」
「えへへ、それなら良かった。お母さんも喜ぶよ。あたしも東雲式医術を覚えないといけないんだけどね。でも、お母さんは無茶な走りは厳禁って言ってた。走れるレベルまでが限界だって」
犬走が頷き、副島が決心したように伊香保に向かって大きく頷いた。伊香保も呼応して、首を縦に振る。準決勝の滋賀学院、おそらく決勝に上がってくる遠江。どちらも犬走の力はやはり必要だ。
それぞれが明日に備え、グラウンドから去っていく。
次々と自転車に乗って家路へ散っていく姿を二人の部員が見送っていた。
皆の背中が消えたのを確認して、その二人はまたグラウンドへと戻った。
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