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甲賀高校は自然豊かな山の麓にある。
グラウンドの向こうには大きな川が流れている。広い土手が広がっていて、二人の男が夕日に照らされながらその土手に腰かけていた。
「…………」
「…………」
「…………なあ」
「…………何だ?」
「…………気づいとるか?」
「…………何をや?」
「…………俺ら………………全然活躍しとらんぞ」
「…………分かっとるわ」
「…………俺ぁ、初めてまわし締めた時より今の方が恥ずかしいわ」
「…………やから、お前も残って練習したんやろが。次、俺らマジでやるしかねえ」
一際大きな図体で夕日を浴びているのが、道河原玄武。言わずもがな、甲賀高校の四番打者である。ここまでの県大会4戦を終え、打率.068 打点1。
隣で長い影を落としているのが、白烏結人。甲賀高校の背番号1を背負っている。ここまで3試合7イニングに登板し、防御率14.13。被安打1、与四死球22。
「お前の指は、いつ手裏剣と同じようにボールが馴染むようになるんや?」
「もうすぐや。てか、それはこっちの台詞や。お前はいつんなったらど真ん中以外を打てるようになんだ?」
「もうすぐや。お前に言われたないわい」
二人は甲賀高校のエースと四番ながら、完全にチームに置いてけぼりを食らっている。
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