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「なぁ、俺ら身体休めとる場合ちゃうぞ」
「せやな。サッカー部に言うて照明点けてもらお」
「俺ぁ今日徹夜で練習すんぞ」
「ほな、俺は準決勝の1時間前までやったる」
「ほな、俺ぁ準決勝の10分前までやったる」
「俺は1分前までや」
「俺ぁ1秒前までや」
「言うとれ、あほ」
「ノーコンに言われたないんじゃ」
二人、殴り合いながら学校のフェンスを跨いでいく。この夜、本当に二人は徹夜で練習に明け暮れた。白烏は何百球を、道河原は何百ものスイングを。全身の汗が渇れるまでやり続けた。
「おおおい、君たち何時やおもてるんや。閉めるどー」
学校の警備員が声をかけたが、集中した二人には聞こえない。黙々と投げる姿と猛然とバットを振る二人の姿に警備員は胸を打たれた。噂の奇跡の野球部やな。明日はとうとう準決勝らしいやないか。
警備員はそっとメモ用紙を取り、さらさらと何かを書いて正門にセロハンテープでくっつけた。
『この南京錠だけ閉めてくれたらええ。明日悔いの無いように頑張りや!』
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