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ベンチ前に円陣を組む。この円陣も随分と様になってきた。副島が一人一人と目を合わす。道河原と白烏の目が明らかに違う。ついさっき、この二人は埋まったスタンドにも目をくれなかった。こいつら、やっと目覚めよるの。副島はこれから始まる強豪との試合が楽しみで仕方なくなっていた。
「ほな、こっからが本番や。今までやってきた高校とは訳ちゃうぞ。二年と一年だけの理弁和歌山とも比べもんにならん強豪や。しっかり伊香保のデータ見て、昨日休めた身体、爆発させたろ」
おぉっ!!!
野太い声が広大な空を席巻する。続いて大きなプラスチックの音がこだました。ブラスバンドは無くとも、頼りになる音だ。
「相手さんも来たみたいよ」
伊香保が三塁側のベンチへ目を向ける。白地にピンストライプのユニフォームが続々とベンチ前に現れ、一人一人がグラウンドへ深く礼をしている。
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