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滋賀学院は遠江高校と県内二大巨頭と呼ばれている。滋賀県ではここ十年、遠江高校かこの滋賀学院高校しか甲子園に出場していないのだ。だが、ここ三年、滋賀学院は決勝で遠江に屈している。
今年はピッチャーに川原、サードに西川、センターに川野辺という三人の「川」がつく選手がキーマンだ。
ピッチャーの川原は、滋賀県ナンバーワン左腕と呼ばれている。藤田より速いマックス148kmのストレートに加え、キレの良いスライダーと最近では珍しいスクリューボールを扱う。今年のドラフト候補にも名前が挙がる逸材だ。
打線では、三番に座るヒットメーカーの川野辺と四番に座る高校通算52本塁打を誇る西川が強力だ。この準決勝まで40得点と、総得点では遠江の30得点を大きく上回っている。
今年こそ、この三人の「川」を中心に打倒遠江なるか。滋賀県の高校野球ファンは滋賀学院と遠江の決勝を心待ちにしていた。
「この三人の川がつく選手を自由にさせないようにしないと、あっという間にやられちゃうわ」
昨日のミーティングで伊香保が散々この三人を警戒していた。もちろん、甲賀ナインはこの三人を重視しつつ、他の打者に対しても対策を頭に描いていた。
今、甲賀ナインは三塁側を見ながら、立ち尽くしている。昨日の伊香保の対策講義に背番号18の話は無かった。散々聞いた三人の「川」は背番号1、5、8だ。じゃあ、あの背番号18は何者なのだ。
『この18番の選手は入ったばかりの三年生みたい。マネージャーとしてベンチに入れたのかもしれないわ』
伊香保はそう言ったが、とんでもない。
化け物だ。
観客はミラクル軍団の甲賀を観に来たか、リベンジに燃える滋賀学院というチームを観に来たかのどちらかだった。
だが、この7月27日、この皇子山球場に集った皆が一人の選手に釘付けとなる。
その男の名は、
滋賀学院高校 背番号18 霧隠才雲
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