14.強豪 滋賀学院 霧隠才雲、現る

17/89
前へ
/531ページ
次へ
「どうしちゃったんだろ、白烏くん」 「わたしも分かんない。正直、あのボールであのコースに決まるのなら、プロでも打てないかもしれない」  桔梗と伊香保がぽかんとマウンド上の白烏を見つめている。チームメートでもこの驚きだ。滋賀学院にとっては衝撃の大誤算であった。 「あのピッチャー、速いけどノーコンやったんちゃうんかい」 「あんなん、遠江の大野より速いで」 「まだ川野辺以外、誰もバットにすら当たってへんぞ」  回を追うごとにベンチが慌ただしくなっていく。  回は3回裏。この回先頭の七番打者が打席に入っている。2回まで三者凡退で片付けられたのは、滋賀学院にとって今大会初めてのことだ。しかも、6人のうち5人が三振を喫している。バットに当てたのは三番打者のヒットメーカー川野辺だけであった。その川野辺でもボテボテのファーストゴロに倒れていた。 「悔しいけど、ええピッチャーや。この試合、ゼロでいかんとまずいな」  川原は思わぬライバル出現に、ぎりと奥歯を噛む。それでも、心理戦で負けたらおしまい、と慌てて深呼吸をし、精神を統一する。  まさか遠江とあたる前にこんな奴らがおるとは……。
/531ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加