14.強豪 滋賀学院 霧隠才雲、現る

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「やっとあいつの本性が見れるかもしれんな」  副島はそんな言葉を残しながら、ベンチを出てネクストバッターズサークルへ向かった。 「滝音くんの本性……?」  桔梗が首を傾げる。桔梗から目を向けられた伊香保も理解できずに首を傾げた。 「由依が分かんないなら、そりゃ誰も分かんないね」 「うん。…………って、いやいや、何やの、その言い方。何もないし」  伊香保の耳が赤い。 「由依って嘘つく時はがっつり関西弁になるんやなぁ」 「…………だって、ほんとに何も……ないもん」  桔梗が肘で伊香保をつつき、伊香保は耳を赤くしたまま二人して滝音の打席を見つめた。  副島がニヤリとして滝音の打席を見つめる。あくまで勘だが、ここまでの滝音は何かを隠している。おそらく滝音なりの分析や策として、今大会のここまで、何らかの布石を打っている。副島はそう感じていた。  滝音の脳が高速で数多ある選択肢から解答を導こうとしていた。さあ、滋賀学院さん。知恵比べだ。
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