14.強豪 滋賀学院 霧隠才雲、現る

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 三球目、ほぼ決めにきたスクリューボール。滝音はこれをファールにした。うんうんと頷いている。キャッチャーも川原もその仕草をじっと見ていた。  滋賀学院の策はこれで完全に固まった。  四球目のストレートで打ち取れるだろう。だが、もし、この五番打者が四球目の外角低めへのストレートをファールとしたとしよう。その後は、100%打ち取れるボールがあるのだ。  実は四球目でその100%打ち取れる球を投げても良い。が、この場面、確実にこの回をこの打者で終わらせねばならない。四球目に投げると打ち取れる確率は98%かもしれないのだ。  それならば、四球目はやはり外角低めへのストレートだ。そのストレートあればこそ、とっておきの五球目は100%打ち取れる球となる。万が一のために五球目をとっておく。  三球目のスクリューボールという攻め。それはファールにされたが、四球目に厳しい外角低めへのストレート。そして、とっておきの五球目。この三段構えの滋賀学院の最警戒モード。  絶対にこの回は終わるはずだ。監督も含め滋賀学院の全員がそう思った。  そのはずだった。
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