14.強豪 滋賀学院 霧隠才雲、現る

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───滝音はこの大会前、副島が引いた組合せのくじを見て、大会をシミュレーションしてみた。  初戦の遠江姉妹社が課題だ。ほぼ初めての実践となる。その後にあたる高校には、慣れればおそらく勝てる。  だが、準決勝の滋賀学院、そして決勝の遠江には負ける可能性の方が高い。どれだけ俺らが野球経験値を上げられるかだが、それは読みにくい。 「わたしはまだみんなの実力を知らない。でも、滝音くんがそう分析するのなら間違いないと思う。じゃあ、わたしはとりあえず遠江姉妹社の徹底的な分析に注力するわね」 「ああ、頼む」  ならば、俺もやっておくことがある。  ひとつ、罠を仕掛けておく。  滋賀学院や遠江はしっかりと分析をしてくるだろう。俺が打たずとも準々決勝まで何とかなるのであれば、滋賀学院とあたるまで、しっかりとした弱点を見せてやる。甘い罠を。  こうして、誰にも気づかせずに滝音はここまでの四試合で、あることを徹底していた。 『真ん中と内角へのスライダーは全て凡退する』  そんな甘い罠だった。
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