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川原が道河原のリードなど気にしないというように、投球だけに集中した。美しいフォームから二本の指先がボールにスライダー回転をかける。外角低めに二球続けてからの、お前の弱点である内角へのスライダーだ。
悪いが弱点をつかせてもらう。打てまい。
「終わりだ！」
川原が叫びながら投じたスライダーが真ん中から、すっと内角へ切れ込む。素晴らしいスライダーだ。
「すまないね。内角へのスライダー、得意なんだ」
キャイィィン！
滝音が腕を畳んだ完璧なスイングでスライダーをとらえる。綺麗なセンター返しが二遊間の上を通り過ぎ、クリーンヒットとなる。センターの川野辺が悔しそうに滝音の打球を捕球した。
点が入った訳ではない。だが、滋賀学院にとっては大きなダメージとなる２アウト一、二塁となった。
甲賀の頭脳、滝音はこの心理的ダメージも織り込み済みだったのだ。一塁ベース上で滝音は派手に拳を握るでもなく、小さく笑った。
「ふん、あれが本性かい。嫌なやっちゃな。敵やったら大嫌いやわ」
副島が苦笑して打席に向かう。甲賀、先制点の勢いそのままに一気に攻め入る。ここで、六番キャプテン副島。スタンドのボルテージがまた、上がっていく。
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