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『滋賀学院高校、選手の交代をお知らせします。ライトの山崎くんに代わり、霧隠くん。霧隠くんがピッチャー、ピッチャーの川原くんがライトに入ります』
ゆっくりと霧隠才雲がマウンドへ向かう。川原はすぐにライトの守備位置につかず、霧隠がマウンドに到着するのを待った。
内野陣がマウンドに集まっている。その輪の中心にゆっくりと霧隠が入った。
「すまん、才雲。任せた」
「ああ、大丈夫だ。川原、ナイスピッチングだった。あとは必ず、抑える」
静かに霧隠は川原に応えた。
「才雲、奴ら手強いぞ。普通じゃねえ。お前みたいにな」
三塁手の西川が霧隠の目を見る。
「大丈夫だ、西川。俺が一番奴らの実力を知ってる。奴らは、甲賀忍者の末裔たちだ。おそらく奴らは遠江より強い」
なるほど。川原と内野陣が首を縦に振った。相手はこの圧倒的なチームメイト、霧隠才雲と同じなのだ。
だが、滋賀学院の全員がその言葉を聞いても怖れることはない。ここにいる霧隠才雲はその甲賀忍者たちより遥かに上にいる。たった数ヶ月の間、一緒に練習をしただけだ。それでも、こうして甲賀の面々と対戦して、分かる。
才雲の才能は天を突き抜けるほどに高い、と。
四回表2アウト満塁。ついに霧隠才雲がベールを脱ぐ。
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