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ストライーーーーク!!!
激しい音を立てて、滝音のミットが揺れる。滋賀学院の一番打者は手が出ない。
「才雲、どうや?」
ぽつりと川野辺がネクストの霧隠に寄って話しかけた。
「対峙してみないと分からん。ただ……」
「ただ?」
「良い投手だ。簡単にはいかない。それに……」
一言一言を霧隠は考えこむように話す。
「それに……何だ?」
「俺が野球部に入ったのは、遠江の大野を打倒するため……。だが、俺には大野より甲賀のこのピッチャーの方が上に思えてならない」
「……そやな。俺もそう思う。才雲、やからお前はここで出ると決めたんやろ?」
「ああ」
また大きなグローブの音が鳴り、一番打者は三振に倒れていた。俯きながらベンチへ戻ろうとしている。
「才雲、この回で逆転して楽にしよう」
「……ああ、行ってくる」
霧隠が打席へ向かう。灼熱の太陽を弾き飛ばすようなオーラが纏われている。
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