14.強豪 滋賀学院 霧隠才雲、現る

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 お次は、こいつか。しびれるな。  白烏は、左打席に入りゆらりゆらりとバットを振る川野辺の様子を眺めていた。  第一打席、滋賀学院のスタメン9人は白烏の前に手も足も出なかった。ただ、その中で一人、空振りをしなかった打者がいた。それが、この川野辺である。  滋賀学院のキャプテンであり、一年生時からレギュラーの座を張る滋賀の安打製造機。実は、白烏と滝音は第一打席で川野辺を打ち取った後に、この打者にはいずれ打たれると直感していた。 「お手本のような間だ。どんな速度、タイミングにも対応できるのだろう」  ショートのポジションで桐葉が呟いた。蛇沼は返事した方が良いのかなと迷いながら、結局話しかける。 「桐葉から見ても凄いんなら、相当のもんだね。次のバッターも一発の怖さがある。やっぱり滋賀学院は優勝候補だよ」 「ああ。やつは、剣士になるべきだ」 「…………プロ野球選手になるよ。剣士になるわけないよ」 「何だとっ!」 「いや、何だとっ! じゃなくて……。桐葉、とにかく守ろう」 「ああ。集中しろ、蛇沼」 「………………」  ちょっぴり天然な天才剣士(打者)である桐葉から見ても、川野辺はお手本となるタイミングの取り方をしている。  白烏は明らかに投げにくそうだった。
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