14.強豪 滋賀学院 霧隠才雲、現る

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 初球。白烏の手元が少し狂い、西川の身体すれすれをストレートが襲う。西川は微動だにせず、見送った。  二球目。同じく内角へ今度はスライダー。背中から入ってくるような変化にも西川は反応しない。急激に曲がったスライダーがストライクコースをとらえる。  三球目。内角低めへの手が出ない最高のコースへのストレート。西川は腕を畳みながらも凄まじいスイングスピードで応戦したが、バットにはかすらず、大きな音とともに滝音のミットに収まった。  1ボール2ストライク。滝音の理想通りに追い込んだ。よし、いいぞ結人。  伊香保もうんうんと頷いていた。その仕草を見て桔梗が少し首をひねった。 「由依、聞いていい?」 「なあに?」 「あの四番……ほんとに外角の変化球打てないの?」 「え、何で? 全く打てない訳じゃないけど、明らかに今までの全打席であのコースの変化球だけ率が悪いわ」  なるほど……。桔梗は納得して口をきゅっと結んだ。 「あたし、男の考えてることって大体分かっちゃうんだよね。由依、それさ、全打席のデータでしょ?」 「え、……うん」  少し勘づいたように、伊香保が不安の表情を覗かせた。 「打率……ゼロじゃないんやよね? もしかしたら、ここ最近の打率が高いとか、どうなん?」 「ごめん、私としたことが。そこまでのソートかけて……ない」
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