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白烏も負けてはいなかった。ストレートこそ霧隠ほどではないものの、プロでも上回るスピードの投手は数えるほどだろう。そこに鋭く曲がるスライダーまである。
白烏も六回の2アウトまで、6者連続三振と譲らない。
六回、2アウトランナーなし。
ここで、試合はまた動く。打席に才雲がこの試合二回目の打席を迎えたのである。
才雲は考えた。
四回は自分と川野辺、西川の三人で1点をもぎ取ることはできた。ただ、この白烏というピッチャー、ただ者ではない。川野辺と西川とてまた次も打てると確信はできない。
では、自身で本塁打を打てるかと自問すると、それは賭けが過ぎると判断せざるを得ない。西川のパワーですらスタンドインすることはなかったのだから。ならば……。
才雲はネクストバッターズサークルに座る川野辺と、ベンチ前に陣取る西川へ視線を向けた。
「才雲のやつ、何かやる気だ。あいつめ、俺らのこと、信用してねえな」
川野辺はそう言って笑った。
「才雲の思うようにやらせてやろう。俺は次にバットに当てられるかと言えば、それは分からん」
西川が苦笑して、川野辺に応える。
「ふふ、俺もだ。あっちのピッチャーも化け物だ。とりあえず才雲が何をしでかすのか、様子を見よう」
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