甲賀忍者、甲子園へ行く【地方予選編】

14.強豪 滋賀学院 霧隠才雲、現る

　結人、踏ん張りどころだぞ。ここでこの霧隠才雲で切ることができれば、次の回の滋賀学院打線の威力も半減する。この試合、このままいけば、点を取られた方が負ける。結人にかかっている。

　才雲の考えていたシナリオは、常人ではとても達成し得ないシナリオであった。才雲は戦術眼にも長けている。
　次の１点を取ったチームが勝利をグッと手繰り寄せる。だが、自分の力を考えると、相手はとても本塁打を打てるピッチャーではない。加えて、キャッチャーの頭脳も明晰だ。甘い球は来ないだろう。
　かといって、次の川野辺が必ず打てるとは限らない。今は２アウトで、川野辺にはヒットを打ってもらうしかないのだ。それに、川野辺ならばヒットを打てる可能性はあるが、川野辺が歩かされると、その次の西川ではもっと確率は低くなる。
　ここは何とか一人で打開する方法を思案してみる。自分には打撃の技術と足がある……。そして……。よし、と才雲は一人で点を奪うシナリオを完成させた。

　……何かを狙っている。滝音は才雲の佇まいにそれを感じていたが、何を狙っているのかは分からなかった。