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滝音には最後まで才雲の狙いが分からなかった。気付いた時には３ボール２ストライクと、フルカウントになっていた。かなりの警戒をしてボールを散らしてみたが、狙い球を読めないでいる。とにかく、長打だけは無いように。そんな配球に徹するしかなかった。
フルカウントから、才雲は唸りをあげる白烏のストレートを悉くファウルにしていく。滝音はサインを考え込む。歩かせるのだけは良くない。ストライクコースで勝負するしかない。
よし、これしかない。滝音は指を何度も折り、サインを送った。内角低めに切れこんでくるスライダーだ。
難しいこと言うな……。言うても前の試合までノーコンだったピッチャーだぞ、俺は。白烏は苦笑した。今まで藤田にマウンドを任せていた分、体力に余裕はある。この試合ここまで集中力を保ってこられたのも、そのお陰だ。それでも、１試合まるまる投げきっていない白烏の握力は徐々に弱っている。力のあるボールとコントロールを両立させるまでは難しくなっていた。
才雲の狙いのひとつは、まさにこのシチュエーションであった。相手は警戒して厳しいコースをつくだろう。だが、次の川野辺と西川の前にランナーを溜めたくないはずだ。フルカウントになれば、ストライクコースに必ず入れてくる。少し威力を落としたボールを。そのボールであれば……。
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