14.強豪 滋賀学院 霧隠才雲、現る

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 白烏は歯を食いしばる。  ここまで耐えに耐えてきたが、ついにコントロールが利かなくなってきた。二者をフォアボールで出してしまう。それでも、衰えない球威で何とか追加点は許さない。  一、二塁のピンチを何とか抑え、白烏はマウンドで咆哮を上げた。  8回。  段々と声が出なくなる。スタンドのメガホンの群れも動きを鈍くする。なんせここまで、打者10人が三球三振に抑えられているのだ。無理もない。  プロのスカウトたちがカメラを回し、忙しなく報告のメールを打っていた。  この8回表の甲賀の攻撃は、またもや三人で終わってしまった。しかも、全員が三振。ここまで13人連続三振という離れ業を見せつけられ、誰もが勝てないと覚悟しても仕方ない状況だ。  ただ、そんな覚悟など、甲賀ナインは微塵も感じさせない。それは、彼らが忍者だからだろうか。もちろん、それもあるだろう。もうひとつ、この8回には覚悟するにはまだ早い出来事が起こっていた。  打席に入った白烏、藤田、犬走の三者とも三振だった。だが、それは今までの三者連続三振とは違ったことがあったのだ。この三者へ才雲が投じた球は12球。そう、この試合初めて、才雲のボールを藤田と犬走がバットに当てたのである。  前には飛ばなかったが、このたった三球のファウルボールが激動の最終回に繋がっていく。
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