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15.薄幸の伊賀者 魂の滋賀学院
皇子山球場は依然としてざわめいていた。
この甲賀高校と滋賀学院高校のレベルの高さを、観客たちは口に出さずにはいられなかった。
白烏の豪腕、滝音のリード、道河原のパワー。同じく、滋賀学院の川野辺のバッティングセンス、道河原と甲乙つけがたい西川のパワー、マウンドを降りたものの川原のキレのあるピッチング……。ハイレベルを挙げれば枚挙に暇がない。
ただ、その中でも霧隠才雲だけは別格であった。
球の速さ、足の速さ、バッティングの技術。
今まで何故こんな選手が無名だったのか。スタンドに陣取っている高校野球ファンや、わずかに集っていたスカウトたちが感嘆の表情を浮かべている。
今年こそ遠江に勝つための秘密兵器だったのか。それにしても能力は日本中の高校生の中でもずば抜けている。このたった4イニングで誰もがそう実感していた。
だが、それにしては浮かない……。
伊香保と滝音は、滋賀学院のベンチに流れる空気をそう察していた。霧隠才雲がこのグラウンドに登場してから、一気に滋賀学院の流れになった。決定的な追加点を取った時こそベンチも盛り上がっていたが、それ以降滋賀学院のベンチは終始不安そうな表情を浮かべているのだ。
遠江に見られたくなかったから?
いや、そのレベルではない。霧隠の能力は圧倒的だ。遠江でも一度見ただけでは、対策など打てないのではないか?
では、滋賀学院のベンチに流れるあの不安に駈られた雰囲気は、一体なんなのだろうか。
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