15.薄幸の伊賀者 魂の滋賀学院

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 甲賀1-2滋賀学院  絶体絶命の9回表。  打席に月掛が入る。俺が、何とかしなくちゃいけねえ。俺が中継で深追いしたから、点取られたんだ。何としても桐葉さんと道河原さんに回す。  マウンドに立つ才雲を睨みつける。具体策はない。俺の足ではセーフティバントは無理だろう。とにかく、必死でボールを見るか、コースを読みきって打ちにいくしかない。  グリップに力を込め、気迫だけは負けないようにとバットを才雲へ向けた。  ふと、月掛は才雲の変化に気付いた。まだ投げてないのに、肩が揺れている。肩で息をしているのだ。  藤田や犬走さんがバットに当てたのも、球威の衰えだったのかもしれない。やはりこのピッチャーはスタミナに不安があるのではないか……。投球練習で山なりのボールを投げているのは、スタミナを抑えるためなのではないだろうか。  才雲は震える指を見つめていた。あと、たった1イニングだ。もってくれ、俺の身体。  前の回で三球ほど、身体の制御が効かなかった。この回は三番と四番に回る。失投は即同点を意味する。それよりまず、この小兵の二番打者を。たったあと三人。一人一人抑えていくしかない。
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