15.薄幸の伊賀者 魂の滋賀学院

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 才雲は皆の目線を浴びながら、皆に向けてにこりと笑った。その笑顔がナインには眩しく、そして痛々しく、皆の網膜に今も鮮明に張り付いている。 「俺の祖父はもういない。親父も、もう自由に動くことはできない身体になっている。つまりは、俺ら霧隠家は限界を越えた身体を操縦し過ぎると死を早めるんだ。代々、俺ら霧隠家の人間は仕えると決めたものにその命を捧げる。その時間はおよそ30分」  ごくりと唾を飲み、西川が口を開いた。 「その30分を過ぎると、どうなる?」  皆が沈黙する。 「命を失うこともある」 「……才雲、そこまでする必要はない」  監督が腕を組んで静かに横に振った。 「分かってます。ただ、俺はこの仲間で甲子園に行きたい。滋賀学院を甲子園に行かせたい」 「お前はまだ16歳なんだ。それだけが人生じゃない。そこまでは俺がさせん」 「分かりました。ただ、この滋賀学院野球部がピンチの時、俺の力を役立てたい。古くから霧隠家は仕える人、時期は己で決めます。年齢は関係ない。俺は17歳の夏、この滋賀学院野球部のために生まれてきた。俺はそう思ってます」
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