15.薄幸の伊賀者 魂の滋賀学院

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 化け物だ。川原はまたゆっくりと左打席に戻った桐葉を見てそう感じた。桐葉の読みまさに、もう川原には投げるボールがない。  これ以上ないボールだった。真っ向勝負と見せて裏をかいた。先程のスクリューに全てを注いでいた。あれを当てられたら、策などあるはずもない。  パァン パァン!  川原の右側から高く響く音が鳴った。西川がグローブを鳴らしている。 「エースだろ? 頼むぜ」  珍しく西川が笑っている。  パァン パァン!!  次は後ろだ。振り向くと、川野辺も笑っている。  パァン パァン パァン パァン!!!!  一斉にあちらこちらからグローブを拳で叩く音が鳴る。 「打たせろ、川原!」 「俺らが守るし、信頼せえ」 「最高のボール放ったれ!」  川原は白球を強く握り締めた。アホどもめ。最期みたいな雰囲気作りやがって……。甲子園に行くんだろ? 終わりみたいに言うな。打てるもんなら打ってみろ、居合の三番打者さんよ。  川原と桐葉の最後の対決は、最期の7球目を迎えた。
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