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「川原っ!」
内野陣が慌ててマウンドに寄った。主審が手を広げて試合を止める。
「すまねぇ、やっちまった……」
川原が苦悶の表情を浮かべている。心配そうな顔を川原に向け、監督がベンチを出た。ピッチャー交代だ。
監督は川原をベンチへ戻し、あとは才雲に託すと決めた。
「監督っ!」
マウンドからの叫びに監督の足が止まる。マウンドで膝をついた川原が首を横に振っている。退きたくない。グラウンドに立たせてくれ、と。
どうする……。監督は立ち止まったまま、悩んだ。川原はただグラウンドを去りたくないと言っている訳じゃない。ずっと見てきたから、分かる。川原は限界を迎えている才雲が駄目なら、その時はまた再登板する気でいるのだ。
答えは、指導者としてはノーだ。ベンチに下げるべきだ。ただ、こいつらは俺の子供同然だ。親として、やりたいようにやらせてあげたい。その思いもある。
長く時間がかかった。監督は決断をした。
「審判、お待たせしました。ライトが再びピッチャー、ピッチャーが下がり、代わりに14番をライトに……」
監督は川原をベンチへ下げた。
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