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タイミングを合わせていた道河原にとって、次のボールは前に飛ばせるかもしれないと手応えを感じていた時だった。
道河原が目を開けてボールを凝視すると、全く違う軌道のボールが向かって来ていた。ボールは、はっきりと真円の形を保っており、一球前と比べて恐ろしく遅い。
しまった、ここでチェンジアップとは……。既にスイングに入っていた道河原は歯を食いしばって手首に力を込めた。振りにいったバットを何とか止める。ボールはまだ来ない。止めたバットで何とかその遅いボールに食らいついた。
コキンッ！
力の無い音とともに、弱い打球がファウルゾーンへ転がっていく。道河原は冷や汗を拭った。
「あぶねえ。さっきまでの見えないほどのストレートから、いきなりチェンジアップかよ」
才雲は必死で平気な顔を装っていた。激しい動悸が襲っている。
キャッチャーからボールを受け取り、才雲は崩れそうになる膝を手で支えた。心臓から尋常でない血を巡らせた身体がところどころで悲鳴をあげている。
バッターボックスに立つ道河原の大きな体躯がぼけて見える。その体躯のとにかく膝元へ投げる。薄れる意識の中で、それだけに集中した。
投じられたボールは、またもチェンジアップであった。
「なめんな！」
道河原が真芯で才雲のチェンジアップを捕らえる。轟音をあげて弾かれたボールは天高く舞い上がり、弾丸のごとくライトスタンドへ向かった。
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