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9回裏。
滋賀学院の二番打者が打席に入る。才雲の交代で入った控え野手だ。胸にしまった御守りを強く握り締めている。
「こおおぉぉぉい」
大きく口を開け、球場中に響く声で二番打者は気合いを入れた。スタンドからブラスバンドの一層大きな声が響き渡る。
「負けられっかよ。才雲や川野辺たちに頼りっきりで、俺らは負けらんねえ」
滝音はその二番打者を見上げた。控えで出てきて、普通なら結人のボールは打てないだろう。だが、そんなデータでは表せない熱気と魂がこの控え野手に宿っている。これが伊香保が言っていた甲子園の魔物なのだろうか。
野球部に入って初めて、野球というスポーツが人々に愛される理由を知った気がした。
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