15.薄幸の伊賀者 魂の滋賀学院

38/46
前へ
/531ページ
次へ
 9回裏。  滋賀学院の二番打者が打席に入る。才雲の交代で入った控え野手だ。胸にしまった御守りを強く握り締めている。 「こおおぉぉぉい」  大きく口を開け、球場中に響く声で二番打者は気合いを入れた。スタンドからブラスバンドの一層大きな声が響き渡る。 「負けられっかよ。才雲や川野辺たちに頼りっきりで、俺らは負けらんねえ」  滝音はその二番打者を見上げた。控えで出てきて、普通なら結人のボールは打てないだろう。だが、そんなデータでは表せない熱気と魂がこの控え野手に宿っている。これが伊香保が言っていた甲子園の魔物なのだろうか。  野球部に入って初めて、野球というスポーツが人々に愛される理由を知った気がした。
/531ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加