15.薄幸の伊賀者 魂の滋賀学院

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 バットを持つ手が赤く腫れ上がっている。  打席に入ったのは、この試合で川原と才雲のボールを必死に捕ってきたキャッチャーだった。この試合、白烏の前に全て三振に倒れていた。 「……あんた、良いキャッチャーだな」  ふと、滝音はそう話しかけられた。返事をするものか迷っているところへ、続けて話しかけられる。 「あんたと、あのピッチャーの関係性は端から見てても良い関係だと分かる。あのピッチャーを甲子園に行かせたいだろ?」 「……ああ、行かせたい。おそらく君と一緒だよ」  打席のキャッチャーはふっと笑った。 「一緒? それは違う。俺は一年の時から川原を甲子園に連れていきたかったんや。あんたら、たった数ヶ月らしいやんけ。どんなにあんたらが化けもんでもな、俺はここで打たんわけにはいかんのや。腕を折ってでもな」  冷静な滝音がひとつ、身震いをした。圧倒的な気迫。たった数ヶ月しか野球をやってない俺らが彼らに勝てるのだろうか? いや、勝って良いのだろうか? 俺らは、こんなにも魂が乗った気持ちを持てているだろうか?
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