16.決勝 遠江戦 甲賀者極まる

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 ベンチからグラウンドに出て、ナインが主審の合図を待つ。 「よしっ、いくぞ! 気合い入れてけよ」  副島が一列に並んだナイン全員を見つめる。  1 センター 犬走和巳  2 セカンド 月掛充  3 ショート 桐葉刀貴  4 ファースト 道河原玄武  5 キャッチャー 滝音鏡水  6 レフト 副島昌行  7 サード 蛇沼神  8 ライト 東雲桔梗  9 ピッチャー 白烏結人  藤田の体調を危惧した橋じいと副島は、藤田をベンチ入りはさせたものの、使う気はさらさらなかった。医務室に承諾を入れたうえで、試合中はベンチ裏の冷房が効いている場所に寝せてある。白烏はこの試合、一人で投げ抜かなければならない。 「それよりお前が気合い入れ過ぎんなよ?」  道河原が副島をからかうように言った。皆が軽く笑みを浮かべる。 「両チーム、整列っ!」  主審が両手を前に伸ばし、整列を促した。  ほぼ満員に埋まった皇子山球場に拍手が巻き起こる。 「っしゃ、いくぞ!」  おおおおおおおおお!  決勝に進んだ遠江、甲賀の両校がホームベース前に整列する。  一人、しっかりとした体格の選手が褪めたような目をして並んでいる。遠江高校の背番号1、大野雄星(おおのゆうせい)。この二年間、甲子園のマウンドを踏んでいるプロ注目のピッチャーだ。滋賀学院をこの大野が抑えて、滋賀学院の悲願を阻み続けてきた。
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