16.決勝 遠江戦 甲賀者極まる

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「では、先行遠江、後攻甲賀。これより試合を行います」  お願いしゃぁぁぁっす!  しゃぁぁぁぁぁっす!  皆が帽子を脱ぎ、深く礼をする中、大野だけは小さく帽子を取るだけだった。  お互いのベンチに帰る時、桔梗が副島に不服そうに言った。 「なんかさ、あっちのピッチャー感じ悪くない? あいつ、さっきちゃんと礼しなかったよ?」  副島は一塁側を振り返り、大野ともう一人の選手を見た。 「あぁ、大野はドラフトでも上位指名されるんちゃうかって言われとる奴や。やっぱ天狗なとこはあるんちゃうか。んでも、あっちのキャプテンは何やすげえ感じ良い奴やったわ。……控えなんやな」 「へー、キャプテンなのに控えなんだ」 「ああ、結構あるで。それだけ人間性が素晴らしいってとこやろな。実は一番怖い存在かもしらんな」  桔梗は首をかしげる。 「控えなのに一番怖い? どういうこと?」 「さあ、ただの勘や。見てたら分かるかもしらん」  そう言って副島はベンチからグローブを取り、空を見上げた。兄ちゃん、あと1試合勝ったら俺も甲子園やで。……信じられへんな。
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