16.決勝 遠江戦 甲賀者極まる

10/95
前へ
/531ページ
次へ
 これは投手戦になりそうだわ。伊香保は一点をどうやってもぎ取るべきか、頭の中で方策をシミュレーションしてみる。  大野は打たせないコツを知っていて、それをちゃんとミスなく投げられる能力が備わっている。打たれたとしても連打を許さない。そんなピッチングができる投手である。  得てして、高校野球では情熱や想いという力が普段以上の能力を引き出してくれる時がある。だが、それは諸刃の剣とも言える。想いが強くなることで、ピッチングが単調になることもある。真っ向勝負は見ていて気持ちが良いが、打者はタイミングを合わせやすい。  大野にはそれがない。極めて大人のピッチングをしてくる。  そんな時は機動力だ。伊香保は犬走と月掛を呼んだ。 「このまま淡々とゲームが進むのは怖いわ。次に回ってきた時は、二人で揺さぶってみよう」  二人は頷いたが、これは杞憂に終わることとなる。
/531ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加