16.決勝 遠江戦 甲賀者極まる

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 二回。  試合が小さく動く。打席にはエースで四番の大野。ゆっくりと打席に向かった。  滝音は伊香保のアドバイスを頭で反芻していた。 「遠江は隙の無いチームで、そこに大きな幹がある感じなの。もちろんその大きな幹はエースで四番の大野くん。投げては防御率0点台、打ってはここまで5本のホームランに5試合で打点18。この大野くんの前にランナーを出さないことが鍵になるわ」  まずはその課題をクリアできている。ノーアウトでランナーなしならば、おそらく一発を狙ってくるはずだ。 「もし、ランナー無しで大野くんを迎えることができたならば、あとは長打警戒。高めの球は持っていかれるから白烏くんのコントロールにかかってる。低めの球も打つのが上手いけど、長打にはなりにくいから」  よし、結人。低め徹底でいくぞ。  りょーかい。  ワインドアップで投げられるのが白烏は嬉しい。高々と腕を上げ、踏み出した左足が力強く土をえぐる。振り下ろされた腕から放たれたボールは低めいっぱいに心地よい音で滝音のミットへ収まった。  ストライクッ!
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